Interviews Twitter
Profile
全盲、日常的にスクリーンリーダーを使用している。 2020年、サイボウズ株式会社に新卒で入社。 アクセシビリティエンジニアとして、kintoneをはじめとするサイボウズプロダクトのアクセシビリティ向上活動をしている。
アクセシビリティに取り組もうと思ったきっかけはなんですか?
まず、視覚障害当事者としてWebアクセシビリティの重要性を肌感覚で感じていたからです。
Webにアクセスできることで、得られる情報量が格段に増えたし、いつでも自由に情報を得られるようになりました。
Webは世界を広げたし、視覚の代わりを補う手段となりました。
しかし昨今、リッチなWebページ・Webアプリケーションが増えてきています。
中には、いくらスクリーンリーダーを使いこなし、ハック的なテクニックを駆使したとしても、操作不可能なものもがあります。
Webに依存している私は、アクセスできないページが増えることに不安を抱えていました。
次に、Webアクセシビリティの向上はすぐに始められると思ったからです。
学生時代にプログラミングに興味を持ち、いろいろ試していくうちに、HTMLのマークアップやページの情報構造のちょっとした差で、使い勝手が大きく変わることに気づきました。
正しい知識を付けさえすれば誰でもアクセシブルなWebは作れるのは、純粋に面白いと思いました。
また、グループウェアのアクセシビリティは最重要と考えるようになった事もきっかけの一つです。
就活の時にサイボウズを知り、グループウェアが使えるかどうかは仕事ができるか否かに直結すると知りました。
グループウェアが使いやすくなれば、仕事をしている人すべてにプラスの恩恵を与えます。これほど重要でやりがいのある役割、仕事はない。と考えました。
アクセシビリティに取り組むことで得られるメリットはありますか?
1) すべての人にとって恩恵がある
アクセシビリティは障碍者・高齢者対応と思われがちですが、すべての人に恩恵があります。
具体的には
- 見出し構造やリンクの配置位置を考える→情報構造が整理され、見やすくなる、わかりやすくなる、スクリーンリーダーで読みやすい
- 色のコントラストをはっきりさせる→暗い場所や外でも見やすい、目の疲れが軽減する
などが挙げられます。
2) 視野が広がる
エクストリームユーザーに着目することでいろいろな視点を知れます。
想像してもわからない、ユーザーの声を聴くことで知ることは多いと感じています。
アクセシビリティに取り組む時に気をつけていることはありますか?
1) スクリーンリーダー対応を助長させないよう心掛ける
自分はスクリーンリーダーユーザーとしての視点を伝えられます。
ただ「スクリーンリーダー対応」しているだけと思われないよう、伝え方のバランスには気を付けています。
スクリーンリーダー以外の人にも効果があるよ、という伝え方を普段から心掛けています。
2) モチベーションを想起させる
「やるべきことだからやる」ではなく、「興味があるから」・「面白いから」・「やりたいから」といったやる気を持ってもらうことが大切です。
そのために、勉強会での啓発が大事だと感じています。
これからもモチベーションを感じてもらえるよう、楽しい・面白い勉強会を開催したいと考えています。
アクセシビリティに取り組むときのデザイナーとの協業について
サイボウズプロダクトのkintoneの場合ですが、アクセシビリティを特別なステップととらえられないよう、デザイン・文言・外部仕様といったほかの要素と並列で扱うようにしています。
具体的には
・プランニング…実装に着手する際、プログラマー・デザイナー・ライター・QA(品質保証)のチームの人たちと一緒に議論する。、方針を決める。
・デザイナーやプログラマー向けに、アクセシビリティのガイドラインを作成し共有する。
・デザイナーが作成したデザインプロトをレビューする、アクセシビリティのポイントをフィードバックする。
・プログラマーと一緒に、コードの品質を高めるチェックツールを導入する。
など、普段から一緒に関わりながら仕事をする工夫をしています。
プロジェクトでアクセシビリティに取り組む際にデザイナーができることはなんだと思いますか?
エクストリームユーザーに意見を求めることは大切だと感じています。
エクストリームユーザーは、
・特定のブラウザや支援技術などの環境を使っている
・制限された状態で閲覧している(マウスを使えない、見切れているものを確認できない、映像にアクセスできないなど)
などのさまざまな状況を日々経験しています。
彼らの意見を取り込むことで幅広い人がアクセスできるデザインが生まれると考えています。
たとえば、スクリーンリーダーユーザーの自分の場合は、以下のようなことを伝えます。
・ページ全体の情報構造について(見出し構造・セクションの範囲など)
・操作やナビゲーションの一貫性
・キーボードでの操作性
・文言のわかりやすさ
このような内容をエクストリームユーザーから聞くことで、初めて気づけることは多いはずです。
声を聴いて取り込むことでより洗練されたデザインになっていきます。
最後に一言
アクセシビリティはやるべきだからやる、ではなく楽しいから・面白いからといった前向きな気持ちで取り組んで欲しいと思っています。
アクセシビリティは実際、楽しいし面白い。なぜならいろいろな視点を知ることができるからです。
そして、そのいろいろな視点を製品やサービスに取り入れていくことは、自分のためにもなるし、誰かのためにもなると考えています。
Interviews Twitter
contrAAAst © 2021