株式会社SmartHR
プロダクトデザイングループ
インターフェースデザイナー
桝田 草一

株式会社SmartHR プロダクトデザイングループ インターフェースデザイナー 桝田 草一

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Profile

HTML、 CSS、JavaScriptといったウェブクライアントサイドの技術とデジタルプロダクトのアクセシビリティが専門です。

現在は株式会社SmartHRに勤務し、インターフェースデザイナーとしてクラウド人事労務ソフトのプロダクトデザインをしています。

また個人としても桝田製作所の屋号で活動しています。

アクセシビリティに取り組もうと思ったきっかけ

もともとWebが好きで、様々な情報にアクセスが可能になる点に惹かれていました。またいわゆるウェブ標準に傾倒したタチで、自分がマークアップした意味が言葉も文化も違う見知らぬユーザーに伝わる可能性がある、というところにロマンを感じていました。

アクセシビリティに興味をもったきっかけは、当事者の方に出会ったのが大きいと感じています。ALSなどの四肢が不自由な方のコミュニケーションをICTで支援するNPO団体のウェブサイトを作る機会があり、直接当事者の方たちと会うことがありました。

そこで自分がマークアップしたウェブサイトが視線入力などの支援技術を用いて利用されていることに衝撃を受けました。ウェブは本当にだれでもつかえるんだと。

その後、ウェブ業界に転職した時にアクセシビリティに取り組んでいこうと思い、一貫してアクセシビリティに取り組める企業で働いています。

アクセシビリティに取り組むことで得られるメリット

Airbnbのinclusive leadの方が紹介していたアクセシビリティを高める3つのビジネスメリットがわかりやすかったので紹介します。

ひとつめはMake money、売上を増やすです。これまで使えなかったユーザーが使えるようになることで売上につながるということです。世界には10億人の何かしらの障害を持つ人々がおり自分たちがグロースを続ける限りそれらの人々をマーケットとして捉えられれば大きなビジネスメリットになると。

つぎにSave money、コストを削減する、です。アクセシブルでないサービスに直面したユーザーはカスタマーサポートへ問い合わせをします。それらはプロダクトがアクセシブルであれば必要でなかったコストです。また解約率の低下にも寄与するはずです。

最後にReduce risk、リスクを減らす、です。日本ではありませんが、アクセシブルでないサービスは訴訟リスクを抱えてしまいます。現にアメリカではウェブサービスがアクセシブルでないことを理由とした訴訟が増え続けています。

これは単に訴訟費用だけの問題ではありません。アクセシブルでないサービスを提供している、ということは企業の排他性のPRにつながってしまいます。これまでPRやブランディングに投資した費用を無駄にしてしまうでしょう。

アクセシビリティに取り組むことは企業として多様性を尊重する姿勢を示すことにも繋がります。特に多様性に関する社会問題が多くあった2020年はそれが顕著になったと感じています。SDGsやESGなどの動きが加速していることもアクセシビリティに取り組む動機の一つになるのではないでしょうか。

アクセシビリティに取り組む時に気をつけていること

アクセシビリティに取り組む際に、職能の異なる仲間の仕事を尊重する事が大事だと考えています。

複数人で開発しているサービスをアクセシブルにしようとしたときに、エンジニアやデザイナー、または他の職能でも、だれか一人だけが頑張れば良いわけではありません。

セマンティックなHTMLを書くことも、複雑なウェブアプリケーションの動作を支援技術に対応させることも、コントラスト比が高い配色も、入力欄に適切なラベルを付与することも、網羅的で効率的なナビゲーションを提供することもすべて必要です。

一人で開発していれば別ですが、これらを一人で提供することは難しいと思います。

チームで開発しているときに例えばデザイナーの立場からアクセシビリティの向上を推進していたとして、アクセシビリティに理解のない、理解が進まないエンジニアと働くことは苦痛に思えるかもしれません。逆ももちろんありえます。

しかし、そのときに理解がないことだけに囚われるのではなく、同僚が大事にしていることを理解し、そのほかの大事にしていることとアクセシビリティの高い融和を目指すことが大事だと思っています。

そしてアクセシビリティに取り組むことでそれができるようになると思います。例えばエンジニアが、アイコンボタンの代替テキストを考えているとき、それはデザイナーの意図を理解しライティングをしていると言えます。

もしくはセマンティックなHTMLの構造を意図したレイアウトをするデザイナーは、エンジニアの領域を担っていると思います。

アクセシビリティに取り組むことで多職種への理解を進められるのではないでしょうか。

アクセシビリティに取り組むときのデザイナーとの協業について

いまはデザイナーとして仕事をしているので、前職のサイバーエージェントでの話になりますが、サイバーエージェントではデザイナーが高精度なモックファイルを作ることが多かったので、デザインモックができた段階でレビューすることが多かったです。

サイバーエージェントではフロントエンドエンジニアを中心にアクセシビリティを推進していたので、ワークフローとしてはその工程が主でした。

レビューする場合も例えば色のコントラスト比が低い箇所があった場合、コントラスト比が担保される提案を持っていきつつ最終的な決定はデザイナーに任せていました。前に話した職能ごとに担保したい大事なことが違うからです。

そのレビューを通じてデザイナーもアクセシビリティへの理解を深めてくれ、変更の際にはアクセシビリティを低くしていないかどうかのレビュー依頼が来るようになりました。

またレビューしたタイミングでは工数などの関係で解決できなかったことも、次のプロジェクトや画面ではバッチリ考慮されていたりと徐々に浸透していきました。

それが一通り進んだ後に独自のアクセシビリティガイドラインを作成したりチェックリストを作成したりしました。最後に仕事をしていたAmebaやABEMAではデザインシステムの一部としてアクセシビリティの考え方、具体的に気をつけるポイントを盛り込んでいました。

デザイナーに限らずだれかと一緒に進める場合は、サービスや我々の会社にとってアクセシビリティがどういう意味を持つか、ということを考え言葉にして伝えるようにしています。

例えばAmebaであれば「100年愛されるメディアを創る」というビジョンを掲げていました。100年愛されるためには年をとっても病気をしてもAmebaにアクセスできる必要があります。そこにビジョンとアクセシビリティの繋がりがあります。

現職のSmartHRでは「社会の非合理を、ハックする。」というミッションですが、自分の能力が原因でサービスにアクセスできないことは「社会の非合理」で、我々は社会の非合理を再生産しないためにアクセシビリティに取り組むんだと言っています。

このようにビジョンやミッションとアクセシブルであることの価値を紐付けることで、アクセシビリティに取り組む意義を理解してもらいやすいです。

プロジェクトでアクセシビリティに取り組む際にデザイナーができること

現職のSmartHRではプロダクトデザイナーとして勤務していますが、変わらずアクセシビリティにも取り組んでいます。現在のチームではプロダクトのインターフェースに責任を持つことがプロダクトデザイナーの仕事であり、そのためには何でもやるので、私はコードも書きますしPMの役割を担っているデザイナーもいます。 よってデザイナーはアクセシビリティのために何でもできる環境です。コードを書くことも一貫したナビゲーションを作ることも。

とはいえ環境によって職種に求められていることは変わると思いますが、自分が責任を持つ範囲で必ずアクセシビリティのためにできることがあるはずです。アクセシビリティを深く理解し、自分の責任範囲において役割を果たせばアクセシブルなものを作ることができると思います。

大事なのはアクセシビリティを理解することです。アクセシビリティは広い概念です。理解を広げ解像度を高めれば、自分の職能とのつながりが見えてくると思います。

アクセシビリティを理解するために何ができるか、一つは既存の体系化された知識に触れることです。とくにウェブの世界ではW3Cが作成しているWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)がありますので、それを読むのが一番早いと思います。 ただWCAGはお世辞にも理解しやすいとは言えないので、デザイニングウェブアクセシビリティといった書籍やAmeba Accessibility GuidelinesなどのWCAGをベースとして理解しやすくしたものから始めるのが良いと思います。

そしてもう一つは、高いアクセシビリティを必要としているユーザーと出会うことです。障害当事者だけでなく、高齢者でもそれこそ特定の疾病を抱えたユーザーでも。 先人の知恵を知ること、ユーザーを知ること、アクセシビリティに限らず、大事なことだと思いますし、もちろんアクセシビリティにも有効です。

最後に一言

自分がエンジニアからデザイナーになってみてわかったのですが、アクセシビリティのためにデザイナーができることは本当に沢山あります。ぜひアクセシビリティに興味を持っていただき具体的なアクションを起こして自分自身がデザインしているものの価値をより多くの人々に届けてほしいです。

もし現在の環境でアクセシビリティに取り組むことが難しい、と感じてしまったらそのときは私と一緒に取り組みましょう。A11YJというアクセシビリティのSlackコミュニティがあります。そこで相談していただくのでもTwitterでも、現在の勤務先に応募いただくのでも、どこでもお待ちしています!

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